忍者の食べていたもの

忍者の力の源・兵糧丸あれこれ

古今東西何時の時代も、「食べること」は大きな楽しみのひとつですね。昔から日本には土地や時代、状況によってさまざまな食文化がありました。今も訪日外国人の一番の目的はグルメとのこと。さて、忍者の携帯食として有名な「兵糧丸(ひょうろうがん)」は、いったいどんなものだったのでしょうか?

 

 

忍者の普段の食事は基本的には玄米、麦や山菜など当時の人と同じものを食べていたようですが、大豆食品やスルメ・にんじん・焼乾(たきいい/炊いたお米をさらに水分が飛ぶまで炊き上げたもの)や胡麻などを好んで食べ、身体機能の向上を常にこころがけていたとか。そして、忍者としての任務の際には「兵糧丸」を携行しました。

兵糧丸とひとくちに言っても様々なレシピや作り方があって、決まったものはないばかりか、戦国武将にとってその製法は兵力増強につながる軍事機密となっていたそうです。ちなみに德川家康だと、その材料は黒豆・黒ごま・片栗粉・砂糖と甘党レシピです。そして、兵糧丸の研究開発に最も力を入れたのが忍者だったそうで、やはり忍者はとことん凝り性の職人気質だったんですね!

 

実は兵糧丸にも飢渇丸(きかつがん)・水渇丸(すいかつがん)という別の種類があり、これらを目的別に携帯食やサプリ的に摂っていたようです。それぞれの詳しい材料や作成方法の紹介は省きますが、ここでは兵糧丸を例に取ってみましょう。代表的な兵糧丸の材料(古文書「老談集」より)は、氷砂糖が材料の半分以上の比重 (!)で、他に用いられる生薬には、ハト麦・蓮の実・桂心(シナモンの仲間)・山薬(長芋)・朝鮮人参などがあります。その効能を見てみると、「滋養強壮」「鎮痛」「抗炎症」「エネルギー補給」「疲労回復」「血行促進」「整腸効果」「リラックス効果」などなどなど…。調べる前は、カロリーメイトのはしりのようにイメージしていましたが、もっとずっと身体に効く、「薬膳」に近いように感じました。三重大学名誉教授の久松眞教授は、兵糧丸は即効型機能性携帯食である。と、論文「科学から読み解く忍者食」の中で述べられています。

 

 

さて、兵糧丸を現代の親の立場で考えると、子供が大事な試験や試合に出かける時に御守り的に持たせたい、頼れる存在ですね。エネルギー補給だけでなくリラックス効果まで期待できるのですから、子供だけでなく自分でも、大事な会議の前に九字切りをしながら口に入れたい逸品です。脱線ついでに、もしかしたら桃太郎が鬼ヶ島に持って行ったきびだんごも、実は兵糧丸だったのでは!?と思いました(笑)

 

お金さえ出せばなんでも手に入る現代はとても便利ですが、目的のためにあれこれ調べ、材料を集めて試行錯誤し、手間ひまかけて何かを作るのは、濃密で価値ある楽しい時間だと思います。もちろんかつての忍者が兵糧丸を作った経緯はそれとは違いますが、小さな兵糧丸も忍者にとっては、過酷な環境下で頼れる、貴重な心の拠りどころだっただろうと考えました。

 

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