「よく聴く」ことのもたらすパワー

問うに落ちず語るに落ちる

 

忍者の基本忍務は情報収集です。そのため忍者に最も必要なスキルは コミュニケーション能力でした。それもひたすら聞き役に徹すること。「問うに落ちず語るに落ちる」とは、人は質問に答えるよりも、自ら語る時の方が断然多くのことを話すという意味です。

聞き役に徹する具体的な手順として、まず「自然な挨拶」は必須項目です。

忍者が挨拶というと意外かもしれませんが、忍者には陽忍・陰忍といって、2つの活動パターンがありました。陽忍は変装して身分を変え、人との会話から直接情報を得たり噂を流したりする忍者。そして陰忍は、姿を隠して敵の陣地や屋敷に忍び込み、情報を取得する忍者です。一般的にイメージされるのはこの陰忍ですね。ですが、今回のコラムでお伝えするのは、陽忍です。

まず挨拶で相手の警戒心を解き、ひとたび会話に入ったら聞き役に徹します。相手に気持ちよく話してもらうため、「そうじゃなくて実際は…」など、自分の知識をひけらかして相手の間違いを正すことは決してしません。相手の愚痴・心配事や自慢話など全てを聴き、受け止めて信頼関係を築きます。そうして、うまくあいづちを打ったり、事前に入手した相手の好きそうな情報を出しながら、自分が聞きたい話題にさり気なく誘導します。そうすることで、より多くの情報を難なく得ることができるのです。これは相手をだましているのではなく、相手が持っている情報をうまく聞き出すためのテクニックです。

昔も今も、「コミュニケーション上手は聞き上手」と言われます。今では普通に言われる言葉ですが、残念ながら実行できている人は少ない術の1つです。知っていることとできることは違います。カウンセラーや高級クラブのような存在(私は行ったことがありませんが、一度は偵察に行ってみたい!)は、目的は違えど、コミュニケーションのプロとしての評価が得られるべき職業だと思います。人は、説き伏せられたり論破されるとプライドを傷つけられたと恨みが残りますが、自分の話をよく聞いてくれた人のことは、信頼したり好意を持つ生き物だそうです。

私達には口は一つで耳が二つあります。口で話す時間の二倍以上は相手の話に耳を傾けるくらいのバランスが、人間関係がうまくいくコツで、まさに「急がば回れ」。

人の心に忍び込むのは、こういう小さなことの積み重ねからです。